綾部の文化財シリーズ(第17回)
郷社 八幡宮   綾部史談会々員 八津合町    引原 英男 氏

 

八津合八幡宮の一ノ鳥居
(京都府登録文化財) 

郷社 八幡宮は八津合町の総氏神である。本殿は江戸時代に再造営された優れた建物であって、一ノ鳥居は旧若狭街道に面しており、江戸時代の建物で、全体の美しさ・重厚さは特に優れている。現在「鎮守の森」の姿をとどめている。

「立地」

 神仏を祀るのに最良の土地は、北方に山、神社の東に川、西に人の往来する道路、南には池や湖があるのが理想とされる。このような神社の立地は、中国伝来の風水思想により考え出されたものであり、風水の四神は陰陽五行説に基づくものである。陰陽五行説から東に青、南に赤、西に白、北に黒を配すると幸運が得られるとする風水の考えがつくられ、青龍、朱雀、白虎、玄武が四方の守り神とされた。青龍が川、朱雀が池、白虎が道路、玄武が山を好むので、これらを四方に配した土地に神社を作るようになった。

 「郷社 八幡宮」の造営を考えてみると、東に薬師川、南に人工池、西に旧道、北に山を配しているので、神社の理想的な立地になっている。

 現在、八幡宮の境内地は旧若狭街道から直線軸に主要社殿を配して、周囲の老杉や植林樹が一体となっているために、境内地の景観を保存するため、京都府文化財環境保全地区に決定されている。

「祭神」

 主祭神は応神天皇で社伝によると、建武二年(1335)に元八幡の地からここに遷座して再建された。祭神として伊邪那岐神、伊邪那美神、大山祇神も祭られている。

「創立」

 本殿は文化十二年(1815)に領主藤懸氏平永恵の命により再造営された。大型の一間社流造の建物で、前面に唐破風造の拝所を付設しているのが特徴である。

「一ノ鳥居」(京都府登録文化財)

 一ノ鳥居は、旧若狭街道に面して建てられている大きな木造の両部鳥居で、親柱を礎石の上に立て、前後の控柱で支える形式の鳥居で文久二年(1862)の建立である。笠木の勾配の取り方や全体の美しさ・重厚さは見事なものである。両部とは真言宗の金剛・胎蔵の両部のことであり、かつて神仏(しんぶつ)混淆(こんこう)の神社に多く建てられている。

     
 本殿(京都府指定文化財)  本殿の見事な彫刻  神明宮社

「本殿」(京都府指定文化財)

 八幡宮の主祭神は応神天皇で、社伝によれば建武二年(1335)に元八幡より遷座し再建され、本殿は文化十二年(1815)再造営された建物である。

 棟札によると、大工は播州加東郡来住村の兵右衛門という宮大工で、拝所や本殿に飾られている象、獅子、バク、雲、鶴などの彫刻は氷上郡柏原の中井青龍軒政忠の彫刻によるものである。

 これらの彫刻は本殿側面の脇障子の刻銘によって明らかである。

 中井氏は三丹地方で有名な彫刻師で、三丹各地に多くの作品を残している。

 この本殿は、文化年間特有のおおらかな装飾感覚を持つ建物であり、上記の彫刻がうまく調和している優れた建物である。

「神明宮社」

 神明宮社は八津合町日置谷より遷座合祀された。向かって右の社殿には伊邪那美神を祭る豊受神社(外宮)、左の社殿には伊邪那岐神を祭る皇大神宮(内宮)となっている。これらのことは「明治十六年府神社庁」へ報告されたものによる。

「厄除神社・稲荷神社」

 神明宮社の左側には、向かって右に厄除神社、左に稲荷神社を祭り、稲荷神社は祭神倉稲魂神であるが、由緒は不詳である。

「大川神社」

 本殿の右側に、祭神大山祇神を祭るといわれているが、由緒は不詳である。

     
 藤懸氏平永忠の銘のある「手水鉢」  「手水舎」

綾部の古木・名木100選の一つ杉
(幹周4.1メートル、樹高40メートル
、推定樹齢400年余)

「境内」

 一ノ鳥居をくぐり抜けると、春には桜が満開になり美しい風景が見られる。右手に社務所があり、左手に「手水舎」があり、手水鉢は「領主藤懸氏平永忠 寄進」の銘がある。池の向こうには「郷社別格記念碑」がある。

 二ノ鳥居の石段を上がると、右手に舞堂があり、左手には「綾部の古木・名木100選」に選ばれた周囲4.1メートル、高さ40メートルの老杉がある。

 境内の周囲には、高さ40メートルを越える杉木立があり、山麓の植林地と合せて境内全体が「鎮守の森」を形成している。

「手水舎」、奥に「郷社別格記念碑」が見える。また、左の池には6月末にはモリアオガエルが白い泡状の卵塊を作る。


「例祭」

   
 秋の大祭での
随神役のお二人
 秋の大祭の神輿行列

現在、八幡宮の大祭は例年10月の第3日曜日に開催されている。平成22年は10月17日()であり、午前8時30分には上林太鼓(かんばやしだいこ)の振れ太鼓が町内を廻った。神事は午前10時45分に始まり、午前11時15分に神輿行列は八幡宮を出発した。

神輿行列は二年に一度であり、お旅所のある石橋へ行き午後1時20分に八幡宮に帰着し、境内を練り歩き神輿行列は終わる。

神輿行列に随神(ずいじん)役二名が随行しているのは珍しいとされている。帰着後、午後2時からは、宮総代が式典の報告と巡行の無事終了した旨を知らせて、上林太鼓、餅撒き、カラオケ大会などがあり、盛大な行事が終わるのである。
写真:綾部の文化財を守る会事務局撮影