塗料「カシュー」と御輿の修理  綾部の文化財を守る会会長 村上高一 氏

 私の住む位田町に、御手槻(みてつき)神社(じんじゃ)という氏神様があります。氏子は八十余戸あります。この神社の御輿傷みがひどく、早急に修理しなければならなくなり、資金積立てという氏子の協力を得て、その計画を立てました。そして様々な経過の後、格段に安い価格を見積もられた秋政仏壇梶i大阪府高槻市)に、修理を依頼しました。作業は平成十七年に始められ、翌年三月に完了しました。素人の眼ですが、御輿は立派な姿によみがえっていました。御輿の修理が無事に終わった後、作業が始る頃から気になっていた他業者との価格差について、この秋政さんを度々訪問した時に尋ねてみました。そうするとやはり塗料のことを挙げられました。即ち秋政では漆だけではなく「カシュー」という塗料を下塗り用として多く使っているとのことでした。

   
 カシュー カシューナッツ断面図 

 カシューという樹は原産地が北東ブラジル、西インド諸島の熱帯性漆科植物で、現在では移植されて、アフリカ、インドその他の国にも見受けられます。この樹は常緑の広葉樹で、大きな木は九〜十二米の高さになります。これは若枝の先に咲いた花からカシューナッツが実り、次いでナッツに接する花柄(かはい)部分が発育して写真@のように、カシュー林檎(りんご)となります。これは指頭大の勾玉(まがたま)に似た形をし、その断面は写真Aのように核を包む殻の部分で厚さが約三ミリあって、ピーナッツの殻に似ています。この殻の中に暗褐色をしたカシューナッツシェル液が含まれており、これがカシュー塗料の主原料となります。さて、カシューは成分・性能とも殆ど漆と同様です。違いは乾燥に当たって湿気を必要とするか否かで、カシューは自然乾燥です。叉、カシューは塗装法が容易なそうです。しかし最も大きな違いは価格です。漆の十分の一といわれています。その理由は漆に比べて生産法が容易で、その量も多いからだと思います。秋政の修理費の安さは全てが塗料のカシューとは考えられませんが、かなりの安さの原因と思慮します。尚、漆かカシューかの使用については素人の目では区別がつかないのだそうです。私は現在の美しい御輿の英姿が長く続くことを望んでいます。